吾輩は金魚である。名前はまだない。みんな「金魚」なる一般名詞で呼ぶ。吾輩の住処は,九重小の池である。9月になり,朝夕は涼しい風が天井の水面を揺らすようになった。睡蓮の花を見上げていると,すっかり秋の空になっていることに気づく。プール脇では,プラタナスが実をつけているそうだ。ノシメトンボがやって来て,そうつぶやいた。ふと「鈴懸」という和名が思い浮かんだ。蝉の声と鈴虫の共演を楽しむことのできるこのひとときに,吾輩もピョンと跳ねて水しぶきをあげてみる。そして,明日も九重っ子たちの笑顔に会えることを楽しみして,一日の眠りに就くのである。



